人間や家畜に猛威を振るう感染症への対応を考える


感染症の猛威

  • 全世界に感染拡大し、猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症は、人々の健康や社会活動に大きな影響を与えています。
  • 一方、家畜のウイルス感染症に目を向けると、2010年には口蹄疫の牛への感染が宮崎県で発生、2018~2019年には豚熱(豚コレラ)が、岐阜県で発生し国内の各地に拡がりました。また各地の養鶏場では鳥インフルエンザ感染症がしばしば発生しています。
  • 伝播力の強い家畜のウイルス感染症が発生した場合、感染拡大防止対策の初期対応は、感染症の早期撲滅を目指して、感染した家畜がいる農場や養鶏場を封鎖し、健康な個体も含めそこにいる家畜をすべて殺し廃棄する「殺処分」を行っています。2020年度殺処分された鶏の数は、過去最大の約487万羽(2021年1月5日時点)に上りました。
家畜の感染防止策
  • 豚熱は豚やイノシシのウイルス感染症で、伝染力、致死率が高く、かつては日本全国にまん延していました。わが国で開発された有効な生ワクチンを広く接種したことにより、国内発生例はなくなり、2006年4月からはワクチン使用を中止しました。
  • 鳥インフルエンザにはH5N1型のように致死率50%以上の高病原性のものから低病原性のものまであり、また豚熱とは異なりヒトへの感染もごく少数報告されています。
  • 家畜にワクチンを使用した場合、予防的な使用であっても国際機関からウイルスが常在化した国と見なされ、感染が確認されていない国や地域への輸出ができなくなるなど貿易上のデメリットが生じます。このため2018年の豚熱発生の初期段階でワクチンの使用が許可されず、感染拡大後にようやくワクチンの使用が認められ、感染は収束方向に向かいました。その間に殺処分された豚の数は約16.6万頭に上りました。
  • 一方、鳥インフルエンザに対するワクチンもありますが、ワクチンの効果の問題や人への感染を警戒して、我が国では原則認められていません。そのほかの感染拡大抑止策として抗インフルエンザ薬の使用が考えられますが、鶏への応用は実用化されていません。
  • また豚熱やインフルエンザを発症していない家畜の肉は、感染していた場合、非加熱の状態で流通した場合には感染が広がる懸念がありますが、加熱加工すればその心配はなくなります。
家畜の殺処分をどうしていくべきか
  • 私たち地球上の生物は、一部の植物を除き、他の生物の命を犠牲にし、命をつないでいます(食物連鎖)。家畜は古くから人々の生活を支えてきました。時代が進み、畜産が産業化し生産効率が求められ、現在、家畜は過密な環境で飼育されていますが、そのような環境は感染拡大を容易に招く危険性をはらんでいます。家畜は、私たち人間のために自由が奪われた挙句、ひとたび伝染病感染の疑いがあれば、周囲の無症状の家畜まで食肉として供されることなく殺処分されています。
  • 人のための薬やワクチンの技術開発は日進月歩です。家畜感染症への対策にそれらの技術を応用することなく、いつまでたっても殺処分偏重の感染拡大防止策を行っているようでは、万物の霊長としての責務を果たしているとは言えません。家畜の飼育環境の改善、感染拡大防止策が確立していない伝染病原体に対するワクチンや薬などの研究開発を促し、殺処分しなければならない家畜の数が最小限となるよう、より一層の努力することが私たち人間に課せられた義務ではないでしょうか。


    参考資料
    1) 豚熱に関する特定家畜伝染病防疫指針
    2) 高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針 令和2年7月1日農林水産大臣公表  

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