十九、毘沙門

 福徳を見守るために毘沙門が遣わされる。主として百足の姿で顕われる。何んとなく気高く、色艶よく主に店の間、座敷、荒神水神の守護の箇所に顕わすので、普通の百足とあやまり殺してはならない。福徳に変動あるものと考えればよい。蜘蛛や蟻、蜻蛉等が遣わされることもある。これを殺したり、傷附けたりすると家運は衰微し、年期を切って破産没落する。家の内に姿を出した百足は殺さぬ方がよい。「有難う宜敷しく願います」と言って、南無忠孝妙法典と称え、屋外に逃がしてやる。殺したり、傷させたりして、毘沙門の咎めを受けると、骨折り損の草臥儲けとなり、商売が非常に忙しくなって、儲けに増した金が出て行く。何をやっても繁昌して失敗に終る。

 周囲には、たたぶる友のみが集って来る。そして一度落魄すると寄り附かなくなる。毘沙門に対する罪を犯かして居ることを気附いたら「毘沙門様、御眷属をあやめて申しわけありません。成仏供養しますから御許し下さい」と詫び、百足退散供養をして成仏させる。すると、不思議に友が入れ代り悪友が離れて、善友が寄る。たたぶる友が自然に寄り附かなくなる。そして次第に良友だけとなって、守立ててくれる様になる。今までの金を見ると、使い度くてたまらなくなる癖等が無くなり、金が溜る様になる。教典を心から称えると、姿が大きくなったり、小さくなったり、そのうちに姿がばっと消えて抜け穀の様な皮だけ残ることがある。

 某女将が「商売に失敗して店を止めねばならぬ」と言う。毘沙門の咎めだと教えると、次ぎの如く語った。

「丁度三年前、毘沙門様に御詣りして、毘沙門様、私は汝の御加護を戴きまして、御店も繁昌させて、戴いて誠に有難う御座います。この上は、たった一度でよろしいから、汝の御姿を見せて下さい。この位信心して居たら見せて下さってもよいでしょうと言って家に帰った処、女中が座敷で、一尺許りもある百足を火箸でたたいて、真二つにして殺して居りました。実体が百足であるとは知らなかった」と言った。

女将はそれから逆転したのであった。満三年後の破産である。某が大病の時、足の痛みが甚く、医薬や「レントゲン」と手を尽したが効がない。種々の障りを除けて、最後又、足が痛み出した。

「昨日毘沙門の使いが来て、足を一本怪我させられたと言って居るが、百足の姿を見ぬか」と尋ねた処、側に居た娘さんが「昨日こんな夢を見ました。百足が一匹胸の方まで、のぼって来るので、はらい落した処、一本百足の足が折れた」と言うのである。其の時、女中が「百足なら私が昨日見ました。御主人の不浄を便所のつぼに捨て様として、蓋をはぐろうとしたら蓋の上に百足が居たので、団扇の上にのせて、はらい捨てました。其の時足が折れたでしよう。まあおそろしい」と言った。詫びたら足の痛みが、ぴたりと止った。そして、あの大病人が一週間で座る様になり、間も無く全快した。

巣を掛ける様な蜘蛛は滅多に憑く様なことはない、家の内にすうと下る様なものや、ふと居る様なものは殺さぬがよい。蟻でも家の内に来る大きなものや、風変りなもの等に気を附ければよい。たとえ通力を得たものでなくても沢山殺して居る場合には、これ等の霊が成仏する様、たまには供養してやるべきである。通力なくとも沢山寄れば、人の意志位は自由にして修行を妨げる。
 

天元教 第一編

一、唱題 南無忠孝妙法典

二、教典 忠孝妙法典

三、序 文

四、霊や神達は居るか

五、大自然は魂魄、言葉、電素に依って活動する

六、霊と香い

七、虫のよい人間たちの多いこと

八、面白く操られて居る人間界

九、油断と満心は汝の行の禁物

十、竜神及び稲荷の行

十一、竜神と人との関係

(一)人間に落ちた安姫の昇神

十二、稲荷と聖天

十三、水神と井戸神

十四、家相の難除け

十五、地鎮祭

十六、丑九十度清浄圏と未申清浄圏

十七、八柱の荒神

十八、八荒神と水神守護の分布

十九、毘沙門

二十、思ひ除け人形法

二十一、思ひと恋慕

二十二、神の思ひ

二十三、仏 霊

二十四、念霊(生霊)と死霊

二十五、人体に憑く動物霊と供養

二十六、樹木や岩に棲む霊と供養

二十七、金神(こんじん)供養

二十八、執念(しゅうねん)供養

二十九、行体の繁殖とその霊及び寄生霊

南無忠孝妙法典
天元教機関紙
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